ペンシルパズルの金字塔、クロスワード。
今回はクロスワードのカギについて掘り下げて説明してみます。
クロスワードのルール
ルールについては改めて説明不要かと思われますが、念のためパズル出版社ニコリ様のものを引用してみます。
1.カギの文章を読んで、思い当たる言葉を、そのカギの番号が書かれたマスから右(ヨコのカギの場合)あるいは下(タテのカギの場合)に書いていきましょう。
2.言葉は、黒マスまたは外周にぶつかるまでまっすぐに入ります。また、特に記載のない場合、1マスにつきカナ1文字が入ります。
3.小さい「ッ」などは、大きい「ツ」などと同じ文字として扱います。
ルール説明終了。
変り種のクロスワードだと、1マスに2文字入るパズルや、縦・横・高さの3方向に解いていく立体パズル、カギが文章ではなくイラストになっているパズルなどがありますが、基本は上記ルールどおり解いていきます。
クロスワードの6種類のカギ
しかしながらこれで終わりだと味気ないので、例題を解いていきながらカギの種類についても触れていきます。
問:カギにあてはまるように白マスに文字を入れて、A~Cを並べてできる言葉を答えましょう。
ヨコのカギ
1.えりごのみ
4.方角を知るための道具
5.倉庫と邸宅が合体した江戸時代の建物
タテのカギ
1.スリーボール・ツー〇〇〇〇〇
2.石炭を食う鉄の馬
3.「維新軍の長州力」が名前の由来となった元力士のプロレスラー
なお、今回出題したA~Cのように、現在の懸賞付きクロスワードは、白マスに埋まった文字を使って別の単語や短い文章を答えさせるものが主流です。
では、各カギの解説をみていきましょう。
換言タイプ
- ヨコのカギ1.えりごのみ
これは答えの言葉をそのまま言い直した「換言タイプ」です。
後述する「辞書タイプ」の派生ですが、キー以外にヒントが全くない分、難度はこちらの方が上。さらに、カギの類語が多い場合は答えの候補が定まりにくく誤った答えを書いてしまい大惨事になることも少なくありません。
今回の「えりごのみ」はあまり類語が多くないので比較的簡単ですが、分からない場合はシソーラスを使うか、後回しにしちゃいましょう。
辞書タイプ
- ヨコのカギ4.方角を知るための道具
次は、答えの言葉の定義を示した「辞書タイプ」。
皆さんご存知の最も典型的なカギですが、こちらも答えの候補が一つに定まらないことがあるので、そこだけは念頭に置いておきましょう。
今回のカギの説明からは、「コンパス」や「磁石(ジシャク)」などの候補が出てきますが、どちらもパズルのマスに満たないので除外。説明に合致する5文字の言葉といえば……。
連想タイプ
- ヨコのカギ5.倉庫と邸宅が合体した江戸時代の建物
こちらは、答えの言葉を導く「連想タイプ」です。
カギと答えの関連性が遠いと一気に難問となりますが、だいたいのパズル作家さんは難度調整してくれています。
今回の場合はカギの「倉庫」と「邸宅」が関連ワード。これらが「江戸時代」なら、それぞれ別の言い方になると発想できればしめたものです。「倉庫」は「蔵」で、「邸宅」は……?
また、良く使われる「連想タイプ」のカギの形式として、3つのヒントを元に解くパターンもあります。
例:
カギ「カンニング・ドライバー・クラフト」(4文字)
答え:ペーパー(カンニングペーパー、ペーパードライバー、ペーパークラフト)
穴埋めタイプ
- タテのカギ1.スリーボール・ツー〇〇〇〇〇
タテ1のカギは「連想タイプ」ですが、穴埋め形式になっています。
この穴埋め形式は、連想タイプだけでなく他のタイプにも側面が強いです。
例1:
カギ「良い方法を考えること。創意〇〇〇」→「辞書タイプ」
答:クフウ(工夫)
例2:
カギ:「パンはパンでも食べられないパンは〇〇〇パン」→「謎解きタイプ」(後述)
答:フライ
パズルの作り手側としても自由度が高く非常に使い勝手がよい穴埋め形式ですが、あまり多いと見映えが良くないので乱発は控えるべきかと。
今回のカギは野球に関連がある説明ですね。カウントでボールの対となるものです。
謎解きタイプ
- タテのカギ2.石炭を食う鉄の馬
このフレーズはお笑い芸人ラーメンズのネタですが、カギとしても秀逸なのでそのままパクらせていただきました。
このカギは「謎解きタイプ」。「連想タイプ」とも似ているのですが、こちらはカギの内容自体も捻って読むことが重要になります。理屈より閃きで解けることがほとんどですね。
あえて理詰めで解くと、前半の「石炭を食う」は「石炭を使う」の比喩ですので、石炭を利用する機器かもしくは石炭を燃やす暖房器具か、あたりをつけます。ここで後半の「鉄の馬」へ立ち戻ると、「鉄」は機械、「馬」は移動手段の連想が可能であり、自動車やバイクといった乗り物全般が考えられます。
石炭を使用する乗り物で、5文字の言葉といえば……。
また、「謎解きタイプ」の派生にダジャレを使用したカギもたまにみかけます。閃かないと答えになかなかたどり着けないので、意外と厄介です。
例:
カギ「ソレに乗ってたのは1時間半ぐらいだ~」(7文字)
答:ハングライダー(1時間「ハングライダー」)
知識タイプ
- タテのカギ3.「維新軍の長州力」が名前の由来となった元力士のプロレスラー
最後のカギは、「知識タイプ」。「辞書タイプ」が国語辞書ならば、この「知識タイプ」は百科事典や新聞・雑誌・TV・ネットなどが原典のカギです。
純粋に知識を答えさせる関係上知らなければどうあがいても解けませんが、懸賞パズル雑誌ではだいたい欄外にヒントが掲載されていますので、分からなければ遠慮なくカンニングしましょう。
また「知識タイプ」は「換言タイプ」のようなブレがほとんど生じないので自分の得意分野のカギが多ければさくさくっとパズルが進みます。
以上のカギをまとめると、こんな感じです。
「換言タイプ」:答えの類語
「辞書タイプ」:答えの定義
「連想タイプ」:答えの関連文
「謎解きタイプ」:答えのなぞなぞ、ダジャレ
「知識タイプ」:答えのクイズ
「穴埋めタイプ」:上記の派生
これによらない複合型やタイプの線引きがむずかしいものもよくみかけますが、基本はこの6種類で全てのカギを網羅することができると考えています。
それでは、例題の答えです。
というわけで、答えはA→B→Cを並べた「インク」でした。
次回は、誰もが知るクロスワードの源流となった日本最古のクロスワードを紹介します。
お付き合いいただきありがとうございました。